図形や線が上手に書ける子どもは文字の上達も早い。
幼稚園では幼稚園教育要領で文字環境は整えても、文字の指導はしなくてよいことになっているが、実際はいろいろな作品になまえを書いたり、保護者も家庭で文字を教えたりしている。すでに兄弟の名前の漢字は書けるよと伝えてくるお子さんもいます。
よくお話しするのは、「文字を書くことも大切ですが、最初は図形や線を楽しく書き、スムーズに自信を持って腕や手・指を自由に効率よく動かす練習をしてください。それにより文字の上達も早いようです。」と、そこで現在様々な試みをしている。幼稚園は来週から新学期で本日はまだ夏休み中ですが2名欠席しただけで24名参加していただきました。保護者の皆さん熱心で送り迎えお疲れ様でした。暑い中、もう頭が下がります。感謝、感謝です。
筆順の大原則は、①上から下へ ②左から右へ である。 このことを繰り返し身につくように指導している。
次の写真は今月18日にその練習用紙に書かれたいくつかです。年長児はすでに、筆の筆圧や速度など個人の特徴が表れていて、楽しい、これから先どのように発達し、変わっていくか楽しみである。幼少期の成長は著しい。
上から順に太く書くようになってます。薄い灰色や緑、空色などで適当に色わけしてあり、その上を筆ペンでなぞり書きします。斜めの線は難しいので途中丸の中に✖印を入れてあります。
世界初の日本の古文書研究躍進のために、研究者と市民が協同して、それもAI技術を使用し、市民がオンラインで「みんなで」協同することで、くずし字で書かれた古文書を、活字化して現代の人たちに読めるようにするのが目的だそうです。国立歴史民俗博物館、京都大学古地震研究会、東京大学地震研究所のメンバーを中心に開発を進める古文書資料の市民参加型翻刻プラットフォーム「みんなで翻刻」が2017年1月に公開されたときは、約5,000人市民の参加で600万文字以上の「くずし字」で解読書かれた資料が解読されたそうです。今回は新バージョンとしてさらに多くの災害資料や「東大寺百合文書」の解読を、最新のAIを使った「くずし字」の自動認識機能も提供されて、新たに7月22日リニューアル公開されたのです。
古文書に関心のある人は、くずし字の解読により、先人の資料から様々なことを発見し学ぶことができると考えます。楽しみながら時に苦しみながら、翻刻したものを他の人が、みんなで添削もしてくれますので挑戦してみようではありませんか。
みんなで翻刻→ https://honkoku.org
筆跡鑑定という言葉は世間に浸透していますが、筆跡診断は聞いたことがない人が多く、そこで筆跡鑑定と言われたり、すぐに理解したりしてもらえません。
私は、大きく言えば筆跡鑑定の中の一つが筆跡診断だと思うのですが。
筆跡鑑定は書いた筆跡が同一人物であるか否かの真偽を鑑定するもの。
筆跡診断は書かれた筆跡から書いた人物の行動傾向を診断するものです。
「診断」とい呼び名をするわけは「健康診断」がいろいろな検査結果から健康状態を把握するように、「筆跡診断」は、書かれた筆跡の特徴を調べて、そこからその人物の行動傾向を診断するものです。
筆跡で性格がわかると言ったりする人もいますが、性格と行動の関係は後日に譲るとして、書道史家・書家の石川九楊氏は月刊誌「サライ」2018.2月号の西郷隆盛の特集の中で「書は人なり、などといいますが、書は書いた人の性格を映すのではなく、書いた人の行動のスタイルを如実に映し出すのです」と語る、と紹介されています。これに私も賛同しています。
筆跡で性格がわかると、というと、皆さん占いのように、自分の性格がわかるのは怖いとか言いながら、でも興味を持っていただけるようです。石川九楊氏が言うように「性格ではなく行動スタイルがわかるのです」
更に「性格」の場合、一般に「良い・悪い」で考えがちです。「性格」といわれるものに本来、良い悪いは私はない考えます。明るい性格というとよく聞こえますが、時にはうるさいこともあるでしょう。暗い性格といっても、沈着冷静で、考えることが好きという面が強いだけかもしれません。解釈は人様々です。一喜一憂せずにじっくり筆跡を観察し自分の行動の特徴を生かすのが良いと思います。
「筆跡診断」というのは、相芸会 日本筆跡診断士協会の森岡会長が命名したものです。森岡会長は1983年光文社から「筆相判断」という本を出版しました。ところが、その本は占いのコーナーに置かれてしまい、会長は、「筆相」の「相」は理科などで言われる「相」を想定していたので、驚いたと語っています。
広辞苑によれば、「相」(そう)は、
①姿。ありさま。外見。形状。②物にあらわれた吉凶。また、それを見ること。③(仏)性質。特徴。現象的なすがた。④(言)アスペクト2に同じ。広辞苑の「アスペクト2では(言)相そう。動詞があらわす動作や形状の時間的な局面・様相(例えば開始・終結・継続・反復)。完了形や進行形などの形式や、特別の動詞を用いて表現される。」とある。「相」の⑤(理)(phase)では、物質系の一部がその内部で物理的・化学的に全く同一性質を示す時、その部分が同じ相にあるという。二つ以上の相の間の平衡は相律によって論じられる。さらに⑧、⑨と続く。
森岡会長は、⑤の物理の意味と考えていたが、①の意味にとられてしまうということをよく話していました。
④の言語・音韻の意味のアスペストは、筆跡は「書く」という行動(行動は動詞で多く表される)なので、石川九楊氏は、この辺も踏まえて、言葉を書くということについて「筆蝕」という造語で様々な著述の中で説明している。
年長さんの書道教室では、図形や線の書き方を最初にやりますが、提出するときの「なまえ」と日付の「数字」を教えるようにしています。
「なまえ」は書けるかな?ときいててをあげさせて、まだかけなくてしんぱいしないでいいですよ。これから書けるように練習します。書ける子は早いですね。と言葉かけして、「来ている服に保護者が書いた名札があり、それを見て書こう!」と言って始めています。
また用紙を準備し、8から9マスの4行くらいのA4用紙の左端(右では見にくいので)になまえの手本を書いてなぞり書きや視写するようにしています。少し難しいと思っていましたが、苗字はまだ書けない幼児もいますが、名前は書ける子が多いようです。
名前練習用紙1は、ホームページのお問い合わせのところに資料としてダウンロードできるようになっています。いっそに研究していただける方や、実施したい方はどうぞ活用して、ご意見等のコメントをいただけると幸いです。
使い慣れない毛筆筆ペンで書きました。線の太細、字形の把握等、同じ年でも何か月かの違いが発達の違いに影響していますが、それぞれに、一生懸命書いたものです。それでも書いた軌跡(行動スタイル)が発達途上ですが、感じられます。
*2回書くことで、疲れてあきらめてしまう子、さらに工夫をして手本に近づける子、だんだん文字が小さくなる子、さまざまなちがいがあります。児童は課題は、なぞり書きさせています。「三つ子の魂百まで」という言葉がありますが、3歳までに、すでに基本は備わっているのかも?姉妹の妹の年中(4歳)の幼児も一緒についてきて練習しています。
一緒に研究をしていただける方、または幼児の図形練習を実践したい方は、お問い合わせの資料から、図形練習1をダウンロードしてご利用ください。
川越・喜多院近くの煙草自販機の張り紙です。味のある筆跡と言葉
思わず、写真を撮らせていただきました!横画が少し右上がりの「値」「味」「灰」に混ざって多少右に下がった「太」の第1画、「古(こ)」の第1画、「奈(な)」の第1画が見られます。横画右下がりに書く人は、前回書きましたが、すぐに行動するのではなく、一歩控えて考えて行動するタイプの人と思われます。右上がりが多数を占める中にあって、少数派です。右下がりは、ちょっとまてよ!と踏み出す前に同調すべきかどうか一旦足を止めて判断する傾向にありると考えます。したがって、独自の思考や行動傾向があると考えます。職業では学者や評論家などに多いとされる筆跡です。
また、「値」の最後の点はバランスを取る「飾り点」でしょうか? 文字の大小の変化や線の太細の変化、絶妙な書き方です。変体仮名を使っていることから年配の方でしょうか? 文字の最終画をしっかり止めて、落ち着いて書いているところにも最後まで力を抜かずにやり通す力があると思います。
また、最近の若者はハネはない傾向にありますが、力強く撥ねています。最後に力を込めてやり抜く忍耐力もあるかと思います。味のある言葉を書く人の筆跡であることも頷かれます。最近の美文字に劣らない、いやそれ以上の味わいのある筆跡です。
紫陽花と和食(豆腐料理専門店)の「梅の花」で頂戴した小ぶりの傘
これは、筆跡を勉強し始めたころ、埼玉県川越市の豆腐料理の専門店を訪ね、おいしくいただくうちに、外は雨になりました。帰り際に傘を使ってくださいというので、貸さなくてはけないので大丈夫です、と答えたのですが、確か返さなくて結構です?という言葉を聞いて使わせていただき、その後も小さくちょっと家の周りで使うには使い勝手がよく、宣伝もかねて、ずっと使っています。この文字について、お店の人に尋ねたところ、「社長」です。という返答をいただきました。前にも書いたように、右下がりの人は、「ン、ちょと待てよ」と、いったん考えてから行動する傾向があります。そこで、すぐに行動に移すのではなく、独自性を打ち出されたのではないかと思います。したがって研究心や新しいことにも、他の筆跡特徴の組み合わせによりさまざまな行動が考えられます。横画は基本は少し右上がりが普通ですが(相当右に上がっている人は行動の早い人が多く、少し右上がりが一般的であるといえます。)しかし、最近の傾向としては活字の影響か、横画が水平の人が多くなりました。活字は肉をそぎ落とした、余分な情報の少ない印刷文字であり、そのような書き方は感情を抑制しているのではないかと考えます。
古文書や日本の古典を原典やくずし字を学びたい人が手軽に学べるアプリケーションソフトが公開されています。「まなぶ」「よむ」「つながる」の3つの機能で構成されています。「まなぶ」機能では草書と変体仮名を学ぶことができます。私にとってはまだまだ少ないと感じていますが、開発者はさらに追加し増やしていくそうです。「まなぶ」では「変体仮名」から「草書体漢字」の2種類があり、学んだあとにテストで確認できるようになっています。次の「よむ」では、「方丈記」冒頭部分や浮世絵師、歌川芳藤のなぞかけの絵すごろく、「しん板なぞなぞ双六」などにチャレンジできます。
さらに、「つながる」機能では、くずし字を学ぶユーザーと交流するための機能で、難しい文字を撮影して、読み方を尋ねることができるのです。
このアプリは、平成27年度科研挑戦的萌芽研究「日本の歴史的典籍に関する国際的教育プログラムの開発」の研究活動の一環として開発されたそうです。
くずし字学習支援アプリKuLA
「アプリで学ぶくずし字」くずし字学習支援あぷりKuLAの使い方/朝倉洋一/編
今年度はコロナの影響で6月29日(月)と30日(火)の2回、体験教室を行いました。参加希望者が32名ということで、16人ずつ密を避けて実施しました。その結果、年長さんの参加申し込みは26名となりました。7月7日(火)が第1回、筆ペンを利用しての練習です。14日(火)もほぼ同じ内容で、毎回1つくらい新しい内容を入れ替えて指導しています。
今年度から小学校1・2年生の国語科書写の中で軟筆(水書きを行う学校が多いと思われますが)での指導が可能となりました。毛筆の指導は今まで通り小学3年生からです。
水書の便利なところは乾くと何度でも練習でき、しかも水なので墨のように汚れないということです。そこで水書が多く採用されるのではないかと想像します。
私は、すごく柔らかい毛先の筆ペンを選んで指導しています。少し手は汚していますが、書いた跡が紙に残るので、1枚は提出させ、記録しています。
指導内容は、図形のなぞり書きや、様々な線の練習、自分の名前の練習などを行っています。
筆順をできるだけ意識させ、1 左から右へ、2 上から下へ、線を書くよう説明しています。
「筆跡診断」とは何? と自己紹介をした時によく聞かれます。筆跡鑑定と思っている人も多いようです。わたしは筆跡診断も筆跡鑑定の一部と考えていますので、よいんですが、詳しくは一般には筆跡鑑定は書いた人の真偽を判断するものです。裁判所でこの筆跡は同一人物によるものか、それとも別人が書いたものかを判断します。
「筆跡診断は、診断と言葉を使っているように、健康診断が健康状況をいろいろな検査項目からその人の健康を診断するのに対して、筆跡診断は筆跡の特徴(文字の書き進め方や字形のとり方など、書くという行動の結果表れた筆跡を診断し、書いた時の心身の状態を推察します。ゆっくり書く人は行動もゆっくりでしょうし、書くのが早い人は行動も速いと考えます。したがって早口の人は書くスピードも速いでしょう。ゆっくり話す人は行動もゆっくりな方が多いと考えます。きちんと書く人よりも行書で繋げて書く人は当然行動が速い傾向の人です。もちろん正式の書類はきちんと書く人がほとんどでしょう。したがって表現形式にもよりますが、転折(文字の折れ曲がるところ)を、きちんと折れ曲がって書く人はカーブして曲がって書く人よりゆっくり確実な行動をとります。もちろんその時の心境や状況により変化はしますが、急いでいたとかなどの状況にもよります。それはそのほかの筆跡特徴との組み合わせでも判断します。指紋と同じように一人ひとり異なるのが書き癖(習慣化した書くという行動)です。しかし、筆跡は指紋のように陰影が重なることはありません。まったく同じ筆跡はコピーとなります。
「つまり、筆跡鑑定は筆跡から書いた人が同一人物であるか、そうでないかの判断をし、筆跡診断は、書いた時の行動のスタイルを診断します。したがって、自己理解・他者理解に役立てることやどのように書くと自分のなりたい自分とマッチするかなどをアドバイスできます。文字を書くという行動は早くて3か月~6か月かけて文字を習慣化するまで書くといつの間にかその行動が変わります。するとその行動は他の行動に波及するはずであると考えます。信じられない人はどうぞ一度体験をしてみてください。